外資系企業に勤めてたけど今日クビになった 後半

322 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 02:28:46.76 ID:EttwVf60
研修が終わり、私の仕事の方も本格的に始動した。
上司らの担当顧客には営業をかけられない私は、彼らが担当していない業界、企業を開拓することにした。
ニッチな産業の業界のトップ企業や、やや小さめの企業にアポイントメントを取って訪問していった。
幸い、会社の名前を出せば、どんな企業にもアポイントメントは入った。
通常、M&Aであれば、時価総額が300億以下の企業は顧客対象にはならない。手数料の額と人件費が見合わないからだ。
しかし、資金調達、特に株式発行を伴う資金調達については話が別だ。手がける金額が同じでも、手数料は10倍になる。

時代は、ジョブレス・リカバリーと呼ばれる時期に突入していた。
国民の一人当たり平均所得は横ばいだったが、企業業績は堅調な伸びを見せ、企業は設備投資や企業買収のための資金を欲していた。
前年はアゴが所属する資本市場部が獅子奮迅の活躍を見せ、弊社東京オフィスはM&A及び資金調達で史上最高益を達成していた。
そのレピュテーションを背景に、私は株式資本市場部(Equity Capital Market)と連携して企業に資金調達の提案を行っていくことにした。
グローバルに強靭な販売網を持つ我々は、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)やヘッジファンド(HF)などの海外投資家の資金力を背景に、
国内のリテールと法人の基盤を中心とする日系他社を圧倒することができた。
また、アゴは私がニューヨークにいる間に新人たちをしっかりと教育しており、私は多くの優秀な部下と働くことができた。

327 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 02:42:14.94 id:EttwVf60
仕事は順調だった。
また、私はカバレッジ・バンカーとなったことで、勤務時間にはかなりの余裕が出るようになっていたため、リクルーティング・チームにも加わった。
私が入社した頃と違い、弊社は日本の学生にも名前を知られる企業へと成長しており、
夏のインターン・シップのための応募だけで、倍率は100倍を超えていた。

私は満足していた。
仕事は順調であったし、景気も良かった。
説明会で学生たちの前に出れば、(誤解を恐れずに言えば)私はとてもちやほやされた。彼らには私が日本のトップ・エリートに見えたことだろう。
急転直下の私の就職活動の話をすると、彼らはやや驚いたような反応を見せた後、羨ましがるのが常だった。
東京オフィスの採用活動は良く組織されており、かつてのようにお偉い方の気まぐれで採用を決めるということは有り得なくなっていた。
学生達は、日本のトップ校のライバルを相手に1000倍を超える倍率の採用プロセスを勝ち抜かなければ、弊社の社員になることが出来なかった。



328 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 02:43:01.43 ID:EttwVf60
ところが、1年生たちを研修に送り出した8月上旬、不吉な事件が起こる。
仏銀大手、BNPパリバ傘下のファンドが資産を凍結した。
ここから先、何が起こったかは、下記サイトに詳しいので、興味がある方は参照されたい。


やる夫で学ぶサブプライム問題
http://vipvipblogblog.blog119.fc2.com/blog-entry-148.html

やる夫で学ぶサブプライム問題についてちょいとツッコミ
http://blogpal.seesaa.net/article/80629520.html


この頃から、債券を組成しての資金調達(Levaledged Finance)案件は激減していく。
自分の庭で起こった事件では無いこととは言え、提案できるメニューが減ったことで私の仕事は俄かに暇になった。

季節が秋になりかけた頃、泰司から連絡があった。

336 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 02:54:57.30 id:EttwVf60
1「もしもし?」
泰「おー生きてるか?」
1「生きてるに決まってるじゃない!半年ぶりの電話がそれ?」
泰「なんだよ・・・お前の3年ぶりの電話だって、褒められたもんじゃなかったぞ」
1「可愛かったでしょ?で、最近どうしてるの?ちゃんと食べてるの?」
泰「ああ、最近ウマいラーメン屋が・・・いや、そんな話をしたいんじゃないんだけど」
1「何よ。まさか風俗じゃないでしょうね?」
泰「俺、帰朝することになったんだ」
1「え!?留学は2年でしょ?」
泰「その予定だったんだけど、ちょっと事情があって、帰らなくちゃいけなくなった。
  専攻はIR(International Relation)に変えてたから、ドクターコース1年修了ってことで、マスターはなんとか取れた。」
1「そ、そう。。。いつ帰ってくるの?」
泰「実は明後日なんだ。土曜だから、お前仕事無いよな?うちの実家に飯食いに来いよ」
1「あ、明後日!?なんでもっと早う言わんと!?いや、ていうか、実家って、、、」
泰「どうせお前忙しいから、前もって言っても直前に言っても同じだろ?だったら意外性がある方がいいかなと思って」

347 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 03:06:09.94 ID:EttwVf60
もうどこから突っ込んだら良いか分からないが、時間が無い。分かったとしか言えない。学生時代からいつもそうだ。

1「分かったよ。。。じゃあ着いたら電話してね」
泰「おう、迎えに来てくれよ。成田に13時着だから。じゃあな」

電話を切ってから思わずため息をついてしまう。迎えに行くなら、明日は禁酒か。。。
いや、それよりも、彼の実家に行って何を話せばいいのか?息子さんをくださいって?何か違う気がする。
あーあ、なんでいつもこうなるんだか。


357 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 03:16:33.98 id:EttwVf60
土曜の朝、9時に起きて、お風呂に入って化粧をして車に乗り、成田に向かう。
道は空いていたが、駐車場をすぐには見つけることができず、12時半に到着。国際線のゲートの前で彼を待つ。

彼が来るまで私は色々なことを考える。
ちゃんと食べていただろうか。向こうにいる間は私がずっと料理をしていた。やせたりしてはいないだろうか。
勉強もきちんとしていたのだろうか。国費で行っているのだから、何がしかを学んできていて欲しい。
学生生活は楽しめただろうか。英語があまり得意でなかったから、友達が作れていたのかどうか心配だ。
そして風俗に行ったりしてはいないだろうか。アメリカでは風俗は法規制が厳しいからとかそういうのはどうでも良くてもし行っていたら泣きたいけれどせめて私には内緒にしていて欲しいけどたぶん行っていたら楽しそうに喋るんだろうなあ。そして私はいつも反応に困るのだ。

そうこうしているうちに彼が現れた・・・となんと!
彼はでっぷり太って、ヒッピーのような格好をし、トランクには種々の落書きが書き込まれていた。

(こん人が悪食でだらしなかことば忘れとったっちゃ。。。)


358 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 03:16:52.98 ID:EttwVf60
帰りの車で色々なことを聞いた。
風俗以外は私の想像を見事に裏切って、楽しい生活をしていたようだ。彼が楽しそうに話す。

1「ずいぶん楽しんでたのねー、私が働いている間にー」
泰「でも、俺お前が怒ると思ったから、ナタリーとは寝なかったんだぜ」
1「。。。!? ナタリーって誰?」
泰「! いや、あの、ネロの女の子だよ、ほら」
1「それはリズでしょおおおおがあああああ!!この浮気者!!!」

高速で私は左手で運転しながら裏拳を見舞おうとしたが、彼まで届かない。
また殴ろうとすると彼がくすぐってきて、運転が乱れる。
私はしばし運転に集中し、彼の実家の家の前まで着てから腰の入ったビンタをくれた。


371 名前:1 ◆RWwEbHEhig 投稿日:2009/02/24(火) 03:39:10.29 id:EttwVf60
彼の実家は東京の奥地の方だった。
学生時代の彼の実家は、都内のマンションだったが、親が退職して家を買ったらしい。
家に入ると、彼の寮の部屋とは打って変わって、キレイな家だった。
玄関の靴はきちんと並べられ、檜の香りが鼻をくすぐり、リビングには彼によく似たお母さんがいた。
お母さんがお父さんと弟を呼びに行く。お母さんと会うのは5年ぶりだが、お父さんは初めてで、弟くんは一度顔を会わせた程度だった。

一同集まり、おでんを